特集

「至福の時」から生まれていくもの
- イラストレーター・河野愛 -

繊細な線を用い、独自の世界観を表現するイラストレーター・河野愛(こうのあい)。彼女のアートワークはファッションから音楽に至るまでと幅広く、かつ自身のテイストがぶれることはない。2015年に入ってからは4月、5月と連続で展示を行い、9月にも「Transmutation」と題した個展を22日から27日まで開催。そんな彼女が個展やアートワークを通して表現する、イラストレーションについて話を聞いた。

Interview & Edit:深山詠美(2.5D) / Photo:AYAKA HORIUCHI Location:FabCafe Tokyo



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4月に「Serph原画展」5月には「Trompe-l’œil(トロンプ・ルイユ)」と連続で個展をされていましたが、終えてみた感想を聞かせていただけますか。

河野愛(以下:河野):4月のSerph原画展が、『MYTHOPOEIA』の発売記念でやった原画展だったんです。これに関わった絵を描くのも展示前に作業を詰めてやっていたので、半年ぐらい家に籠りっきりで。そのあとすぐに「Trompe-l’œil」が始まったので、もう時間があれば絵を描いてる感覚でした。終わった達成感、充実感もあるんですけど「とにかく終わってよかった」という感じでしたね。

「Serph原画展」では、河野さんが今までに手掛けたSerph関連の全原画が展示されていましたが、Serphのアートワークやジャケットがどのように制作されているのか教えてください。

河野:Serphに関しては、次にリリースされる作品の、ある程度できている音源を聴いたりはします。けれど、どちらかというとレーベル(noble)の担当の方がタイトルやテーマ、絵のイメージをまとめてくれていますね。Serphはすごく難しい言葉で、一般的には分かりづらい表現でイメージを伝えるんです。だからそれをレーベルの方にやわらかい表現にしてもらい、私の中で解釈して制作してます。

アートワークの制作段階では、音源はまだ完成していないんですね。

河野:nobleだとスケジュールが結構早くに動くので……。リリースされる半年前くらいかな。情報公開も早めにされるので、逆算していくと早く動くことになっていて、それに先行して次に出すジャケットのイメージワークなどをレーベルが詰めてくれています。

Serphのジャケットについてなんですが、『vent』『Heartstrings』から、『el esperanka』で印象が変わったように感じられます。

河野:そうそう、最初のうちって一枚絵ですね。『vent』の時は初めて依頼されたときに、探り探りな部分がレーベルにも私もあったと思うんですよね。だから与えられた指示もそこまであるわけじゃなく……。自分の表現できる術を全部出した感じです。だから出来上がった作品を見せる時が一番ドキドキしました。

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自分を全部出し切っている作品を否定されてしまわないかという不安で?

河野:そうですね。『vent』は2010年の作品ですけど、そこまで(イラストの)仕事をたくさんしていた時期じゃなく、フリーランスになって日が浅いときだったので、まだ覚悟がなかったんですよね。イラストを見せる姿勢がまだ”不安”というか。結果、良かったんですけどね(笑)。だからこの時は、他の作品と比べて制限がなく描いているように見れると思います。

Serphを追い続けていた人たちはアートワークの変遷を見て、”何らかの変化”を受け取っていると思います。

河野:自分が他の仕事を受けるようになってきてから、仕事をすればするほど絵が上達しているのが自分でも目に見えて分かる部分があって。自分の精度が上がってそれに対して、レーベルの意向も変わってきたんです。Serph以外の作品を見て、評価してくれる部分もあって。先の作品に対して自分が成長したことが大きなつながりになっているんですよね。

その成長を『vent』『Heartstrings』と差別化してやろうとしたのが『el esperanka』?

河野:そうですね。やっぱり『vent』と『Heartstrings』の時からいきなり『el esperanka』に移るまでが大分変わったと思います。Serphと私をずっと見てくれている方はみなさん「絵が成長してるね」と言ってくれます。

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河野愛

河野愛

1984年1月千葉県生まれ。2008年からフリーのイラストレーターとして、雑誌、広告、映像、WEB、CDジャケットなど幅広いアートワークに携わっている。一部挙げるとソラリアプラザ、URBAN RESEARCH、Panasonic、Bunkamura、講談社、KADOKAWA、ワコール、Serph、ほぼ日手帳、その他多数。細密画をベースに形や大きさや色、固定観念にとらわれず共存しあう空間を描く。

OFFICIAL SITE:http://aikohno.com

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