特集

日本人クリエイター対談 -FaltyDL編-
And Vice Versa × Aspara

7月にbeatinkからアルバムの日本版をリリースした、Matthewdavid、FaltyDL、Bok Bok、Jim-E Stack。この4組を軸に、日本の最新音楽シーンを語る上で無視することの出来ない重要なビートメイカー、DJ、音楽にまつわるエディターなどに対談してもら4本連続企画、”日本人クリエイター対談”。

今回は第2弾、Ninja Tuneから3rdアルバム『IN THE WILD』をリリースし、先日来日公演を果たしたFaltyDLを軸に、大阪在住のビートメイカーAnd Vice VersaとDJのAsparaにLicaxxxが話を聞いた。個々には勿論、共に活動もしているゆかりの深い二人からどのような話が聞けるのだろうか。


Interview:Licaxxx / Edit:結城紫雄(2.5D)


まずFaltyDLとの出会いを教えてください。

And Vice Versa(以下、AVV):2年くらい前に、Lapaluxと同じぐらいの時期に来た印象がある。NinjaTuneの前ってどこから出してましたっけ?

Aspara(以下、As)HEMLOCKUNTOLD主宰の。僕はそこで初めて知りました。

AVV:結構日本人好みな。

As:そうですね、メロディックでもありながら、イギリスの当時は新しかったハウスっぽい、ガラージっぽい感じを盛り込んでいるのが印象的でした。

私も元々はガラージっぽい印象がありましたね。

AVVDisclosureとかを真面目にしたような感じ(笑)。

As:DJの目線からみると、すごいダンストラックというよりは作品として扱われるものとの中立的な立場にある感じ。それがとても日本的。

今回のアルバムについての感想を教えてください。

AVV:正直今までで一番好きですね。

As:オーガニックな印象というか、パーカッションな曲も入っていていいなと思いました。好きにやったというか、解放されたような。

AVV:肩の力がちょっと抜けたというか。

As:そうそう、すごい三枚目って感じ(笑)。

AVV:特に”in the wild”という曲がすごくかっこいいなと。バグッてる感じも。

2人には事前にFaltyDLに質問して頂きました。その返答について伺いたいと思います。

And Vice Versa:あなたのサウンドは折衷的なスタイルがとても魅力的でいて特徴的ですが、制作の際に、なにかポイントであったり、自分の中のルールはあったりしますか?

FaltyDL:曲を作っていて誰かのコピーに聴こえたり、これ、あまりにも聴いた事あるようなサウンドだなっていう時は、そこでちょっとストップして振り返って、違う方向性を考えるようにしてる。それはひとつのルールだね。でもルールっていうもの自体にはあまりとらわれないようにしてるんだ。何かを怖がらないようにしてるくらいだね。だって、結局は音楽なんだからね。家で作ってるわけだし、自分以外の誰かにいい印象を与えようとする必要はない。楽しむのが一番なんだ。

And Vice Versa:楽しもうとしても、真剣になると、実際に楽しむのが難しかったりもするのでしょうか?

FaltyDL:時にはね。仕事みたいな時もあるから。締め切りもあるし、リミックスの時とかはそうかも。技術面やビジネスサイドの作業はもちろん楽しいとは言えないし。でも『In the Wild』では、ファースト・アルバムを作っている時のような感覚に戻ることが出来たんだ。色んな実験を楽しめた。『Hardcourage』の時は、すごくシリアスだったからね。今回はあまり色々気にせず作ることが出来たんだ。

And Vice Versa:よくアーティストが、セカンドアルバムが一番作るのが難しいっていいますよね。方向性とか期待とか。

FaltyDL:だね。セカンド・アルバムを作ったあと、サード・アルバムがすごく作りやすくなったのは確か。そういう意味でセカンドは確かに大変だったけど、内容的には『Hardcourage』が一番大変だったんだ。トラック・リストも何度もレーベルとやりとりしたり。

この質問をした意図は?

AVVWarpチルドレン的な、折衷的なミュージシャンって日本にも沢山いると思うんですけど、そこで色々新しい音楽とかいいなって思ったものどう自分のスタイルに取り入れるのか、あえて取り入れないのかっていうところが気になって質問しました。

音楽を始めたきっかけはなんですか?

FaltyDL:5歳か6歳の時から音楽を作ってた(笑)。親が楽器を習わせるようになったからね。ドラムもやってたし、長い間フルートもやってた。フルートってダサい? 言わない方がよかったかな(笑)? うそうそ。俺は気にしてない。

ご両親は音楽に携わってたんですか?

FaltyDL:いや、全然音楽一家とかじゃないんだ。でも親が背中を押してくれた。俺がちょっとテンションの高い子供だったからかも。エネルギーが半端じゃないかったから、楽器を持たせればそれに集中出来ると思ったんじゃないかな。でもフルートを習ったのは良かった。スズキ・メソードだったから、耳がすごく鍛えられたんだ。あの経験はお金には変えられない。一生もののレッスンになったね。メロディを聴き取れるし、キーもわかるし。最高だったよ。

真剣に曲を作り始めたのはいつ頃でしょう?

FaltyDL:バンドにいた時くらいからかな。ベースをやってたんだけど、誰もベースって注目しないから(笑)、もっと自分でコントロールしたいなって思うようになったんだ。で、90年代半ばにAphex Twinを聴くようになってから、自分の自由時間をもっと曲作りに費やすようになった。トラブルを起こすことよりもね(笑)。で、Planet Muと契約してから、キャリアとして真剣に音楽制作を始めたんだ。5年くらい前だな。そこまではそれほど真剣じゃなかったけど。

どんなバンドにいたんですか?

FaltyDL:ジャズやロック、ファンクも。全部インストだった。ボーカルはいなかったんだ。でも曲は全てオリジナルだったよ。ジャズもオリジナルだったし。

音楽制作の時期、5年前って短いんですね。

As:久保(And Vice Versa)さんは何年ぐらいですか?

AVV:所謂DTMってなったら7年くらいかな。

As:じゃあ僕らが出会ったくらいですかね、あのときハードと半々くらいでしたもんね。

お二方楽器は?

As:僕は何もできないです。

AVV:僕はギターやってました。中学の時ずっと曲づくりがしたくていきなり作曲からはじめて、自分で作った曲を友達のバンドに演奏してもらったり、ボーカルとかしてました。高校生のとき。

初めて聞きましたね。

As:僕も初めて聞きました。

AVV:オルタナティブロックとか所謂ミクスチャーとかが好きで。ポストロックとか。基本的に混ざってるのが好き。だからNinja TuneとかWarpとか好きになるのは自然な流れなのかなと。AsparaくんはなんでDJ始めたんですか?

As:僕は逆に全く楽器ができなかったので、一番手っ取り早いのがDJなんじゃないかなと。オリジナルというのにこだわりはなくて、人の作った曲で色々できるなんて最高じゃんっていう(笑)。あとレコードのジャケット集めるのが好きだったので。

Planet MuからNinja Tuneへレーベルが変わったことで、状況の変化はありましたか?

FaltyDL:Ninja Tuneの方が期待が大きかったっていうのはあるね。Planet Muよりも大きなレーベルだから。Planetは、やりとりの時、内容について一人対一人で話す感じなんだ。でもNinjaは、emailのやり取りやミーティングを同時に6人くらいとしてる感じ(笑)。次から次にね。それは変化だった。レーベルもオフィスみたいな感じだし。クールだよ。もちろん、より大きなレーベルということで安心感もある。

でも、それでもインディーズであることは変わらないし、ファミリー感は残ってるんだ。コールド・カットの2人もオフィスにいるし。彼らは本当に良い人たちで。プカーっとタバコ吸って座ってるんだ(笑)。彼らの機材も使わせてくれるし、最高だよ。

As:こういう質問は宅録ミュージシャンは気になりますよね。

AVV:Ninja Tuneはファミリー感があって、Warpは高層ビルにあるみたいな話を聞いたことあるのですが、この話は更に対比させてる感じなのかなと。Ninja TuneとPlanet MuだったらNinja Tuneの方がファミリー感があるんですね。

あなたがミュージシャンとして活動する上で、ニューヨークという土地柄がご自身の制作に与える影響はありますか?

FaltyDL:すごくいいクオリティの生活が送れる場所だと思う。成功者たちとリアリティのどちらからもインスアパイアされるんだ。どちらの可能性も見ることができる。ニューヨークに来た最初の頃は、アート・ショーのオープニングなんかに沢山顔を出して、色々な人に会って刺激を受けたよ。ここの全てが最高だと思った。本当に刺激を受けたね。モチベーションにもなるし、それがあったから今自分がその一部になれてるんだと思う。

同時にプレッシャーも大きいですか?周りに刺激的な人が沢山いると。

FaltyDL:プレッシャーにはなる。先月アルバムをリリースする直前は、かなりプレッシャーを感じてたよ。家にいながらも、皆が作品を気に入ってくれるか気になってた。そこまで心配する必要ないってわかってはいるんだけどね。

As:僕はミュージシャンの食べてるものとか、好きな場所とか、どういったところで活動しているのか気になってしまうタイプなので、ここまでちゃんと答えてくれると思ってなくて嬉しいですね(笑)。 Magical MistakesもFaltyDLの言った感じだよ、とも言ってたんだけど成功してる人はすごく成功してるし、そうでない人はそんな感じの生活しか出来ないって言っていて。そういう場所で成功するっていうのはどういうことなのかなと思って質問しました。

▶NEXT:FaltyDL新アルバム制作のバックボーン
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FaltyDL

FaltyDL

フォルティDLことドリュー・ラストマンは、コネチカット州で生まれ、現在はニューヨーク、ブルックリンを拠点に活動。〈Planet Mu〉〈Ramp〉〈Rush Hour〉〈50 Weapons〉 〈Hemlock〉〈Swamp81〉といったシーンを賑わす主要レーベ ル、また自身が主宰する〈Blueberry Records〉、そして〈Ninja Tune〉から作品をリリースし、これまでに『Love Is A Liability』『You Stand Uncertain』『Hardcourage』のアルバム3タイトルを発表。他にもジェイムス・ブレイクやレディオヘッドとツアーをし、ジ・エックス・エックス、ディスクロージャー、シェウン・クティ、フォーテックらのリミックスを手掛けるなど、アーティストから も絶大なる信頼を集めている。

In The Wild

In The Wild

アーティスト:FaltyDL
発売日:2014年7月26日
レーベル:Beat Records / NINJA TUNE
ASIN:B00KIFJCIS
EAN:4523132116310
参考価格:¥1,944
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And Vice Versa (INNIT / Day Tripper Records)

And Vice Versa (INNIT / Day Tripper Records)

大阪在住の宅録ミュージシャン、ビートメイカーであるクボマサユキのソロプロジェクト。Techono、House、Bassなどジャンルを横断しつつも、メランコリックなコードワークや自身のヴォーカルサンプル等をブレンドした音世界が特徴。2010年7月には米、カリフォルニアのレーベルSomething Americaにて Magical MistakesとのスプリットEPをリリース、 同年9月にはRefrain Recordsより1stフルアルバム[still beautiful]をリリースしている。2012年4月に、Seiho主宰の「Day Tripper Rercords」より、アルバム「E.Tender」をリリースしている。他にも、Metome、Velveljin、Aldo Benitez等、国内外を問わず数々のリミックスワークをリリース。更に野外フェス[Sense Of Wonder 2011]や、[Sonar Sound Tokyo 2013]などにも出演し、2014年春にアメリカツアーを果たした。またAsparaとのDJ+リズムマシンユニット、「AVV+ASP」や、「INNIT」、「RAT RAT」などのオーガナイズもしている。

Aspara(Lomanchi / 1314)

Aspara(Lomanchi / 1314)

2006年 金沢を拠点にDJとして活動を始める。以後様々なクラブイベントに出演。現在は大阪へ拠点を移し、INNITやRAT RATに出演。PPTVとの思想活動”Lomanchi”として、And Vice Versaとのユニット”AVV/ASP”としても活動中。

Licaxxx

Licaxxx

1991年東京出身。DJ活動を中心に楽曲制作、メディアアート制作など活動は多岐にわたる。ビート~よつうちを彼女なりの解釈で昇華する音楽性を武器に、DOMMUNEや2.5Dの出演、block.fmでレギュラー番組”SEXY808″のパーソナリティをつとめ、都内に留まらず地方を飛び回る。