特集

~ 吐き出すことと見つめること ~
BALMUNG&縷縷夢兎インタビュー

アキバ系アイドルとのコラボレーションからレディー・ガガへの衣装提供まで、オールレンジに活躍する「BALMUNG」デザイナー・Hachi。今年1月にアイドルユニット・でんぱ組.incの新衣装を手がけ、メジャーシーンに鮮烈な印象を残したニットブランド「縷縷夢兎」のデザイナー・東佳苗。2.5D配信「nu years talk session」出演直後の両デザイナーに、互いの制作ルーツについて話を聞いた。

Edit:結城紫雄(2.5D)/ Photo:磯部昭子 / Model&Calligraphy:万美


東さん(縷縷夢兎)から見たBALMUNGはどの様な印象ですか。

東佳苗:未知ですね、自分とは全然違うと思います。Hachiさん(BALMUNG)のように建築的・構築的な脳が私には無いんですよね。私の場合「女の子をどう可愛く見せるか」という意識で、自分の中身を吐き出すイメージで制作をしています。BALMUNGに見られる構築的な服は一切作ったことがありません。


BALMUNG

Hachiさんは高校で電子制御工学を学ばれたそうですね。

Hachi:当時学んだ工学の基礎は、現在の活動に少なからず影響しています。工学や化学、物理にしても、基礎にあるのは「数学」なのですが、数学って結構メタな要素、言語あるいはコンピュータのOSのような役割を持っています。これを応用すると、化学や物理に表情を変えるんですが、あくまで根っこは数学。その相対的な全体像の関係性を知った上で、服を触ったり見たりしているようなバランス感覚。そういうものが僕と、僕の周りの人との服作りの感覚の差だと感じることなのかなと思います。


BALMUNG

理系的思考がベースのBALMUNG、右脳的な制作が行われている縷縷夢兎と、両者の違いは明確ですね。

東佳苗:私がニットに行き着いたのは、ミシンが自分と離れている感じがしていて好きじゃないからなんです。自分のコントロール下に無い感じが苦手で、手縫いとか手編みとか、手作業の方が良いんです。昔は絵を描くことの方が好きだったのですが、絵画とニットは感覚が近いんですよね。いろんな糸を混ぜて一本にするのと、絵の具で色を混ぜ合わせる感じ。

ニットって実はとてもアバウトで、修正したり、伸ばしたり縮めたりも自由自在なんでもあり。布帛だと有り得ないようなミスもニットだったら問題なかったりするんですよ。普通のファッションの常識は、ニットにはあまり関係がないんです。私はファッションを表現の一つとして、自分の中身を吐き出す手段として選択しているので、手作業じゃないと信じられない部分がありますね。


縷縷夢兎

Hachiさんから見た縷縷夢兎はどの様な印象ですか。

Hachi:佳苗ちゃんは吐き出すタイプの表現技法だから、感情や瞬発力がその都度乗せられて作られた”服”だと思います。BALMUNGは、瞬発力によるそのスピードの渦の中で作られた服と、いうような物はあまり無いんです。ちょっとゆっくりかもしれないんですが、まず全体図をイメージしてから、ディティールや細部の要のポイントが決まっていくという、まさしく反対のタイプというか。

東佳苗:ぼんやりとした見通しはあるんですが。作っているうちに変わっていくので、結果デザイン通りのものができないんですよね。私の制作は、完全にモチベーションに寄ります。気持ちが離れている時はやっているだけ、やらされているだけになってしまって、ただ同じ絵をなぞっているような感じです。

Hachi:そういった波が僕にはありません。例えば、一般的に「デッサンを続けること」で、絵画の技術や正確さが上昇するという話があります。しかし、筆をとらない間にも、久しぶりに描いてみたらデッサン力が伸びていることがあります。どうして伸びる場合があるのかというと、描かない間に「見る力」が成長していた場合なんです。見る力が描く力を表裏一体のように補っているんです。BALMUNGはそんな感じで、直接的な「服作りではない何か」によって支えられているのかなと思っています。制作時の調子の善し悪しではなく、自分が普段見ているテンションや集中力が、作る時にも反映される、というような。佳苗ちゃんにとってのニットの行為は、より肉体やリズムに近い、ジョギングのようなものなのかもしれませんね。

東佳苗:多分女子特有のものだと思うのですが、恋愛とクリエイションの浮き沈みが比例しているところもありますね。幸せ過ぎると作れなくなる傾向にあります。嘔吐形の創作方法なので、現実に満足していないくらいが制作には丁度良いんだと思います。

Hachi

Hachi

1985年生まれ福岡出身。 高校課程では電子制御工学を学ぶ。 服飾学校で学んだ後、自身のレーベルBALMUNGとして少しずつ服作りを始め、 都内セレクトショップにて置き始める。 ロンドンのセントマーチンでの作品制作の協力、 某ブランドにて数シーズンのアシスタント経験、 東京のショップCANDYにてバイイングやディレクションを行うなどを経て、 その傍ら作り続けていた。 そして服作りを媒体として表現活動を行う場「dinner」として 空間インスタレーションによる服の発表を行ったことをきっかけに、現在はBALMUNGとして主に作品制作を行う。

東佳苗

東佳苗

縷縷夢兎(るるむう)デザイナー。1989年福岡県生まれ。文化服装学院ニットデザイン科卒業。ハンドニットの一点物アイテムを中心に展開中。現在「the Virgin Mary」「iromonomarket」webshop「PEAUFINER」への委託販売、伊勢丹解放区、WALLなどの催事への参加や、アイドル、アーティストへの衣装デザイン、内装装飾、時々スタイリストとしても活動中。感情を綺麗に吐露し生まれるクリエイト、“嘔吐クチュール”をブランドコンセプトに置き、いまを生きるすべての女の子を“muse”とし、皮肉と毒と裏返しの愛情を込めて世の中を強く生きていくための乙女の戦闘服と時めきアイテムを創っている。