特集

アーティストであるために必要なこと。
女性アーティスト鼎談 愛☆まどんな × キュンチョメ × 中里周子

渋谷の文化を一言で表すことは難しい。世界的な都市でありながら、秋葉原や高円寺のような特定の色を持たず、常に流動しつづける混沌の街。唯一「渋谷らしい」と言えるカルチャーイベントが、東京を中心に活動する女性クリエイターによる「シブカル祭。」(以降、シブカル祭)だ。

5年目を迎える今年、クラウドファンディング・BOOSTER上で「SHIBUKARU MATSURI goes to BANGKOK」と題したプロジェクトが発表された。”これまでシブカル祭に参加したのべ800名を超えるクリエイターたちの中から選りすぐりの10組と、実行委員会として運営・全体コーディネートを手掛けるRCKT/Rocket Company*が一体となり、東京・渋谷発の女子クリエイティブを広く世界へ発信するとともに、現地バンコクのクリエイターと交流し、新しい表現を生み出す機会をつくる”という目的のもと、現在プロジェクトページでファウンドを募っている。
今回の鼎談に登場するのは、本プロジェクトにも参加するアーティストで国外からの評価も高い愛☆まどんなキュンチョメ中里周子の3名。それぞれの発言から、アーティストとして生きる彼女たちの今の思いを垣間見よう。


Interview & Edit : 奥村健太郎 / Photo : 谷浦龍一(2.5D)



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海外で活動するアーティストに立ちはだかる壁

まずは今年6月の「SHIBUKARU MATSURI goes to BANGKOK」を控えて、みなさんがどの程度海外での活動を意識しているかを聞きたいです。

中里周子:先日アマチュアで一番大きな「ITS」というコンペティションでジュエリー部門のグランプリをいただきイタリアに行ったのですが、海外は物事の展開の早さが尋常じゃなく、簡単に著名人に会える環境だったことに驚きました。例えばITSの審査員には(当日は欠席していましたが)ニック・ナイト(フォトグラファー)、コンスエロ・カスティリオーニ(MARNIデザイナー)、マニッシュアローラ(Manish Aroraデザイナー)やサラ・マーノ(「VOGUE」イタリア編集部)、前の年にはマリーナ・アブラモヴィッチ(パフォーマンスアーティスト)など著名な方々が名を連ね、喋りかけることもできた。実際にその場で「うちで働きなよ」みたいな誘いもあるらしいんですよ。だからこそ、メインストリームに対していかに積極的に動けるかが大事なんだと気付かされました。

そんなに身近にいらっしゃるんですね。

中里周子:一方で「日本人はビザが下りないので実際には働けない」という問題にも直面して。ただ海外に行けばいいというわけじゃないんだ、という気付きもありました。最近は2月にロンドンへ展示に行くなど、本当に少しずつですが海外で活動をさせていただくようになって、国の助成金などを調べる機会が増えてきたのですが、ファッションが「文化助成金」の対象に含まれないというケースがよくあるんですよ。

キュンチョメ:確かに、ファッションが対象に含まれていない場合は多いですよね。ファッションや演劇からすると「アートは助成されている」と言われるけど、ちゃんとお金を出してくれる公的な機関は超少ない。文化に対する国の態勢が整っていないんだなと感じます。

愛☆まどんなさんが身を置くポップカルチャーは国策で力を入れている領域なので、ある意味”助成されやすい”のでは?

RCKT/Rocket Company*:そこはちょっと特殊で、国が力を入れているのは「アート」というよりは「アニメ」と「アイドル」なんですよね。

愛☆まどんな:ただ海外では私の絵柄は完全にアニメとアイドルに紐付けて捉えられています。女の子の絵にコピーを添える作風なのですが、コピーを直訳しても日本語の間合いや侘び寂びは通じない。「JAPANESE KAWAII」のような角度からしか見てもらえないことが少しもどかしいです。世代や国が変わるとこの感覚は伝わりにくいのかなぁ。

国レベルではなく、ミクロな視点の策はないものでしょうか。

愛☆まどんな:そうですね……。でも、結局大きな作品にはお金がかかりますから(笑)。やりたいことに没頭する分だけ働く時間が減るのだから、表現をする人がお金を持っていないのはある意味しょうがないこと。もう少し国にアートを援助する余裕や理解があればいいなと思います。

RCKT/Rocket Company*:そういう時こそBOOSTERのような仕組みを使うんですよ(笑)!

一同:あぁ、そうですね(笑)。

RCKT/Rocket Company*:僕たちは何もできないけど、色んな人の目に触れることで何かの手助けになればと思って取り組んでいるのが「シブカル祭。」や「SHIBUKARU MATSURI goes to BANGKOK」なんです。バンコクでもできるだけ多くのお客さんに来ていただいて、何かひとつでもアーティストのきっかけが生むことができれば、それはそれで成功かなと思っています。

キュンチョメさんは海外での活動を視野に入れていますか?

キュンチョメ:もちろん!! 芸術は若者や日本の問題ではなく、人間全ての問題です。世界を目指さない芸術なら一体それは何なのでしょうか。といっても、私たちは今年から海外へ進出したいなと考えている段階。色んな国へ行って、そこに住む人達の視野や業を自分にぐわーっと溜めて、ブワーっと出していきたいと思っています。

外国の方からの作品に対する反応を受けて、気付いたことはありますか?

キュンチョメ:先ほども話に出た「情緒」の問題は大きいですよね。今日本に根付いている「情緒」の中には、敗戦国のニュアンスがかなりの割合で含まれていると思います。「憂い」や「欲」みたいな。海外は基本的に合理主義の考え方だから、伝わりにくいんじゃないかなぁ。

ただ僕の外国人の友達には小津安二郎の映画が好き、と言う人も結構居るんですよね。あのタイプの映画が外国の方に通じるのはなぜなのか、すごく不思議で。

キュンチョメ:文学でも村上春樹とかが世界的な人気を得ているのは不思議ですね。あのニュアンスも伝わるのか、って。

RCKT/Rocket Company*:映画や文学には共通のフォーマットがあるからじゃないかな。知っているパッケージだから入り込みやすくて、日本的な感情や情緒が伝わる。でもアートには全く決まりが無いでしょ。文脈や文化が全く違う場所に作品を出すことを考えると、プレゼンテーションの仕方が重要だと思います。

中里さんはITSのプレゼンの際、技巧を説明するのではなく、作品に対する思いを熱く語ったんですよね。

中里周子:当日に通訳が居ないことが発覚して、用意していた原稿を父にメールで訳してもらって……もう必死(笑)。決して上手な英語ではなかったのですが、熱意をもって気持ちを伝えればいいんだと思いました。海外では特に「作家が自分の作品に対してどの程度の熱を持っているか」が重要視されていて、審査員はその想いに動かされるんです。

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愛☆まどんな

愛☆まどんな

嫌われない程度に愛されたい女流美術家。美少女はみずからの愛を代弁する究極のモチーフ。コピーはそこに降りてくるもの。2007年より愛☆まどんなという名で秋葉原の路上を起点に、ライブペインティングの活動を開始する。絵画、立体、イラストレーション、ライブペインティング、また自身の作品を落とし込んだグッズの製作など国内外問わず活動している。近年の展覧会に個展「顔色が悪いのは私のせいじゃない」(2014,PixivZingaro/東京)、個展「幸せの黄色い・・・」(2014,VV渋谷宇田川/東京)、グループ展「IMPACTS! ・勢み」(2014,Zane Bennett Contemporary Art/アメリカ)など。

キュンチョメ

キュンチョメ

ホンマエリとナブチのユニット。「こんな世の中キュンチョメするしかないいっしょ?! 」との思いからキュンチョメをスタートさせる。花壇を踏み進まなければ展示会場に入れない「Flower xx」(2012)、東日本大震災の被災地で自らがひたすら遠吠えを続ける「遠い世界を呼んでいるようだ(Like howling to the farther world)」(2013)、日本の自殺の名所である樹海で“もういいかい”と誰かに呼びかけ続ける「なにかにつながっている」(2014)、など、さまざまな場所と手段で人の業と対峙する。近年の個展に、「ここではないどこか」(2013,ナオナカムラ/東京)、「なにかにつながっている」(2014,新宿眼科画廊/東京)など。第17回岡本太郎現代芸術賞受賞。

中里周子

中里周子

ファッションデザイナー。88年生まれ。2011年立教大学文学部を総代卒業、同年よりここのがっこうにて山縣良和、坂部三樹郎に師事、ファッションデザインを学ぶ。2012年より東京藝術大学芸術芸術学科美術教育専攻に在籍し現在は博士課程に在籍中。近年の受賞歴に、「3331アートフェアー東京」にて美術手帖賞(2014)、DIESELが主催する欧州インターナショナルタレントサポート(ITS)にてジュエリー部門グランプリ、Swarovski Award受賞(2014)。

BOOSTER

BOOSTER

BOOSTERは、PARCOが運営するインキュベート・クラウドファンディングです。 クラウドファンディング“crowd funding”とは、群衆“crowd”と資金調達“funding”を組み合わせた造語。新たな挑戦を志す人や組織が、プロジェクトを始める前のタイミングで、必要な資金をインターネット経由で個人から調達する仕組みです。 「インキュベーション(=新しい才能の発見と応援)」をテーマに掲げてきたPARCOが、様々な資源を活用してプロジェクトの実現をサポートし、サポーターのみなさまと一緒にクリエイティヴな挑戦を世の中に送り出します。