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増田セバスチャンが「カワイイ」の先に見るもの
今の時代に映画「くるみ割り人形」が果たす機能

原作の公開から35年の時を経て、映画「くるみ割り人形」が現代に蘇った。監督を務めたのは、今や世界共通言語にまで膨れ上がった「カワイイ」の先駆者・増田セバスチャン。初となる映画制作の過程を聞くと、そこには自身のクリエイションの根源との対峙と、ブームとして消費されつつある「カワイイ」に対する警鐘があった。戦後から今に続く歴史を文脈的に捉え、伝えていくことがどれほど大切か。それはまさに今、ブームの渦中にいる人間こそが耳を傾けるべきなのだろう。


Interview & Edit : 奥村健太郎 / Photo : 渡辺竜成



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「くるみ割り人形」 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

まずは、完成から試写会を経たご感想を伺いたいです。

増田セバスチャン:10代、20代の女性が反応してくれる事は予想出来ていたのですが、今回面白かったのは、30〜40代の男性が感想をたくさん言ってくれたことでした。今の30〜40代の世代は、良い意味で子供のまま大人になった人たち。だからこそ、ダイレクトに興奮してくれたのかなぁと。同じ世代の女性だと「この映画を子供にどうやって説明すればいいですか?」と、「子供が観る」という範囲で捉えている方もいたようなのですが、男性はストレートにはしゃいで楽しんでくれたようで、僕にとってはそれが一番大きな収穫でした。

今回の制作で強く意識されたことはどの部分ですか?

増田セバスチャン:地元の千葉県松戸市に「サンリオ劇場」があって、そこで小学校2年生ぐらいの頃に旧作の映画を観たことがあるんです。当時はサンリオさんが映画を作っていた時期で、「シリウスの伝説」とか「ユニコ」とかを上映していました。その時の記憶では内容を全く覚えていないんですが、「不思議で怖い」、「なんだかわからないけど心にひっかかる」という感覚は覚えていたので、今作でもやるべきところはそこだと。大人になっても覚えている”なんだか分からないその部分”をやろうと思って、意識しました。

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監督をされるまでのプロセスを教えてください。

増田セバスチャン:まず、サンリオさんが保存していた1979年の旧作のフィルムの状態が良かったので、これをデジタルに変換して現代に蘇らせようというプロジェクトがあって、その流れで僕のところに監督をしないかというお話をいただきました。でも、正直に言うと「原作も観ているし、先輩たちの手がけた偉大な作品に手を加えるというのは、大変だなぁ……。」と思いました。ただ旧作の一番最初の脚本を書いたのは、実は寺山修司さんだった、ということが分かって。その脚本をサンリオの辻信太郎社長が子供用に書き直したのが旧作の脚本なんです。僕は10代の頃寺山修司さんに強く影響を受けたので、「これは運命だ」と思ったし、「他の人に監督をされるのは嫌だ!」と思ったので、お引き受けすることにしました。

具体的にはどんな作業からとりかかったのでしょうか。

増田セバスチャン:まずはスタッフに自分がやりたい構想を大量の資料をつくってプレゼンしました。とくにストーリーが複雑だったので、僕が考えるストーリー解釈を図解して説明したり。舞台でもライブでも必ず最初にやる、”脳みそを共有する”作業です。そして旧作の脚本のままだと現代には伝わりにくい表現があるから、旧作の脚本編集も始めました。「脚本の編集に時間をかけて、なるべくテンポ良く、現代の子たちに通じるものにしよう」という着想をしてから、旧作の編集を始めたんです。

作っていて、ご自身の創作につながるような新たな視点や発見はありましたか?

増田セバスチャン:映画を作ったのは今作が始めてですが、映画の魅力に取り憑かれて、あと何作かやりたいなと思いました。最初にこのお話をいただいた時は、やったことがないから「どうしよう」と思ってしまったんですが、旧作を観ている時に「あ、これは舞台みたいだな」と気づいて。僕は仕事柄、舞台の演出は何度もやってきているので、それなら、映像の中で舞台をやってみようと。

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『くるみ割り人形』 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

色彩の面で、「くるみ割り人形」と増田さんはどの部分で相性が良かったと思いますか?

増田セバスチャン:実際旧作はもっと暗い色調なのですが、僕が子どもの時に観た記憶ではものすごくカラフルだったんです。今作ではあの時見た色を出しただけです。多分、大人になっていく過程において、色もだんだん見えなくなっていっているんだと思います。その色は子どもの時は見えていたはずなので、そこを引き出すだけで良かったんですね。

観ていて舞台の要素を強く感じました。声優さんの演技にも。

増田セバスチャン:そう。声優さんにも「舞台のつもりで演じてほしい」と伝えて、一緒に演技指導もしました。見えていないですけど、身体を動かして演じています。だから映像と馴染んでいるんだと思います。

増田セバスチャン

増田セバスチャン

1970年生まれ。
演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年に"Sensational Kawaii"がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。 2009年より原宿文化を世界に発信するワールドツアー「Harajuku"Kawaii"Experience」を開催。 2011年きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」PV美術で世界的に注目され、2013年には原宿のビル「CUTE CUBE」の屋上モニュメント「Colorful Rebellion -OCTOPUS-」製作、六本木ヒルズ「天空のクリスマス2013」でのクリスマスツリー「Melty go round TREE」製作を手がける。 2014年に初の個展「Colorful Rebellion -Seventh Nightmare-」をニューヨークで開催。

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http://m-sebas.asobisystem.com