特集

~ 断捨離ズムに中指を ~
みうらじゅん

「面白い」という感覚は【おも‐しろ・い】という言語で定義されて初めて、コミュニケーションの場で使用することが可能となる。”言葉で表せない概念”の共有は、外国人と会話をするより困難だ。この世にみうらじゅんがいなければ、”ゆるキャラ”がTVを席巻することも、”マイブーム”について語り合うことも出来はしない。

仏像や怪獣、埴輪からしびんにいたるまで、万象を収集・分析し定義していくみうらじゅんのスタイルは、単なるコレクターというより昆虫学者のそれに近いだろう。なんだかよくわからない芋虫の様なものを捕まえては鋭い観察眼でラベルを貼り、分類し、生態系を明らかにする。彼により名付けられた”DT”や”クソゲー”といった虫たちが、私達の会話に昨日までは無かった彩りを与えてくれる。

そんな同氏のライフワークである、全国各地に点在する”なんだかイマイチな土産物=いやげ物”を集めた展示会「国宝みうらじゅん いやげ物展 in TOKYO」が17日より、渋谷・パルコミュージアムにて開催中だ。会期スタート前日、展示設営まっただ中の同氏に話を伺った。


Edit:結城紫雄(2.5D)/ Photo:谷浦龍一(2.5D)



まずはじめに、展示会「国宝みうらじゅん いやげ物展 in TOKYO」のコンセプトについてお聞かせください。

みうらじゅん:とても難しいですよね。そもそもお土産の意味って、「買ってもあげても嬉しい」という所にあると思うんです。しかし世の中には、もらってもあまり嬉しくない、それどころか置いておくのもいやだっていう物、つまり”いやげ物”があると、25年ぐらい前に気が付きました。そういう物たちは誰にとってもノーサンキューなスーベニールなんで、当然土産物界の片隅に追いやられ、今や絶滅種なんですよね。それらを救おうという運動もしくは修行を25年間行ってきました。

©Jun MIURA/PHOTO BY Hirokazu TAKAYAMA

運動はわかりますが、”修行”とはどのような意味なのでしょうか。

みうらじゅん:当然、自分もまともな人間なので。

ははあ。

みうらじゅん:そういう物を見た時に、即「いらないな」とは気付くんですよ。その感情をこらえて、とりあえず気付く前にレジに運ぶ、という行動が”修行”ですね。あえて値札も見ないで、自分に有無を言わせず購入する。その二十五年間の修行の繰り返しが、この展覧会です。

25年前に何があったのでしょうか?

みうらじゅん:「甘えた坊主」という、小坊主が木魚に甘えたように寄り添って寝ている、瀬戸物の人形があるんですよ。その人形が、ある土産物屋さんでは「一休」と名づけてあり、またあるところでは「雪舟」という名前で売っている。

根本がブレていますね。

みうらじゅん:25年前、四国のお遍路の時に、土産物屋のおじさんに尋ねてみたところ、「一休さんが修行中にちょっと居眠りをしてしまった姿」と言われたんです。でもその後日本の各地でその人形を発見したのですが、各地には異なる名前の「甘えた坊主」が存在していたことがわかったんです。「雪舟」というプレートを見つけた時は、「雪舟だからネズミが乗っているんだ」と説明されたんですが、雪舟は確かに涙でネズミの絵を描いたエピソードはありますが、背中に乗せていたなんて知らない。しかも、雪舟の生まれ里である地方に行けば、その人形が一個も存在していなかったんですよ。

ある時中国に行った時に、やんちゃ小坊主がいろんなことをしている掛け軸を見つけたんです。当然それを模したグッズもでていて、完璧に「甘えた坊主」と一致する。つまり、それが何らかの形で日本に来た時に、名前が変わっているんですよ。それからその人形を「甘えた坊主」と名付け、自ら集める意欲を高めて収集してきました。

他にも、今ほとんど使われなくなった「栓抜き」。いやげ物のなかには、毛利元就の股間の部分をぶちぬいて栓抜き状態にしているやつとかがあるんです。しかもその栓抜きの上に短いキーホルダーがついている。これでどうやって栓を抜くんだ、って思うでしょ。こういった栓抜きを「ヘンヌキ」と呼ぶことにして集めてきたり。まずは名前がない物に対してネーミングし、さも存在するかのような錯覚に自分を陥らせて買ってきた物なんですね。

自己暗示ということですね。

みうらじゅん:そうですね。饅頭みたいに、食べてしまったら終わりの物はいいとして、形が残ってしまう物は捨てにくい。仕舞いこんでも、くれた人が遊びに来たりなんかしたら慌てて取り出さないといけないでしょ。

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国宝みうらじゅん いやげ物展 in TOKYO

国宝みうらじゅん いやげ物展 in TOKYO

期間:2014年1月17日(金)〜2月3日(月) 開場時間:10:00〜21:00
(最終日は18:00閉場/入場は閉場の30分前迄)
会場:パルコミュージアム
入場料:一般500円/学生400円
(小学生以下無料)おまけ付

主催:パルコ
企画制作:バウコミュニケーションズ、アーク、
みうらじゅん事務所
制作協力:SOL、劇団往来、
ECCアーティスト専門学校

監修:みうらじゅん

http://www.parco-art.com

みうらじゅんスペシャルトークショー

みうらじゅんスペシャルトークショー

出演:みうらじゅん
内容:TALK
放送日:2014年1月25日
放送時間:17:00〜
収録場所:2.5D
観覧チケット:1,000円(税込)
※観覧チケットは完売いたしました。

みうらじゅん『いやげ物』

みうらじゅん『いやげ物』

発売日:2005年7月7日
価格:945円(税込)
出版社:筑摩書房
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みうらじゅん(イラストレーターなど)

みうらじゅん(イラストレーターなど)

撮影:常盤響 1958年京都市生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、イラストレーター、作家、ミュージシャンなど幅広い分野で活動。1997年造語「マイブーム」が流行語大賞受賞語となる。近年では、全国で見られる地域に根ざしたマスコットキャラクラーを「ゆるキャラ」と命名して紹介し、一大ブームを巻き起こしている。著書に「見仏記」シリーズ(いとうせいこう氏共著)、「アイデン&ティティ」(2003年映画化)、「色即ぜねれいしょん」(2009年映画化)、「いやげ物」、「ゆるキャラ大図鑑」、「自分なくしの旅」、「マイ仏教」、「セックス・ドリンク・ロックンロール」、「キャラ立ち民族学」など。「勝手に観光協会」「ザ・スライドショー」ほか音楽、映像作品も多数ある。近著に「正しい保健体育Ⅱ結婚編」(イーストプレス)、「どうして人はキスをしたくなるんだろう?」(宮藤官九郎さんとの対談集/集英社)、「マイ京都慕情」(新潮社)など。最新CD「勝手に観光協会vol.3ご当地ソングCD完結編」、DVD「みうらじゅん&いとうせいこうザ・スライドショー12+1」発売中。2014年2/1「TV見仏記」シリーズ初のベスト盤DVD「The Very Best of TV見仏記~振り返りトーク・セッションスペシャル~」が発売予定。