特集

GIRLS LAB × 2.5D
大森靖子 × NUKEME 対談

大森靖子というアーティストの存在が成立し、支持されているという事実は、長くの間「可愛くてキラキラした女の子」の独占市場であった音楽業界においては「バグ」だと言えるかもしれない。極端な妄想と現実すぎる現実を行き来する大森の歌は、聞くものの心に痛く食い込む。
今回の彼女のコラボレーターは、ミシンに特殊なプログラムを組み故意にほつれを発生させる「グリッチ刺繍」を用いた衣装作品などを発表しているファッションデザイナー・アーティストのNUKEME。
彼らの作品は、鑑賞者の脳内に「なんだか変なもの」を残す点において共通する。
大森曰く「全てを失ったが、全てを持っている世代」に育った二人の対談をお届けしよう。

Interview & Edit : 佐藤大智 (FOOL’S MATE)、奥村健太郎(2.5D)/ Photo : イソベマサミ


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NUKEMEさんの制作された衣装を着てみて、いかがでしたか?

大森靖子(以下、大森):私はアーティスト同士の個性がぶつかり合って変なものが生まれる瞬間が好きなのですが、今回「縷縷夢兎」の東佳苗さんの衣装と、NUKEMEさんの衣装が意外にマッチしていてテンションが上がりました。いつもゴテゴテしているものや黒一色のコーディネートで着ることが多いので、今までに着たことのない雰囲気でしたね。16メートルのTシャツ(上記画像参照)は着るのが大変でした(笑)。

NUKEME:特にこのTシャツは人が着ることを想定していないので(笑)。今回着てもらった作品は一つひとつで完結するものなので、コーディネートされた人を見るのは新鮮でした。

NUKEMEさんの作品は個性の強い衣装ばかりでしたが、大森さんはばっちり着こなしていましたよね。

大森:ピカチュウのかぶりものとか、サンバ祭りみたいな髪飾りとか、派手なものが似合うみたいで。弾き語りって、見た目は基本的に地味じゃないですか。アコースティック感があって、黒髪を伸ばしているような素朴な雰囲気の子がやっているイメージ、というか。私はそれがつまんないなぁと思っていて。昔はずっとライブも私服でやっていたんですけど、衣装を東佳苗さんにお願いするようになってから、派手な衣装も着て大丈夫なんだと気がつきました。服によってステージ上の動きが変わったり、自分が動かされるようにもなって。

NUKEME:大森さんって、最近何考えてるんですか?

大森:仕事で言うと「世の中での大森靖子の立ち位置」を今年あたりからちゃんと考えるようになりました。「今の社会の雰囲気の中で自分がこう振る舞ったら、こういう捉え方をされるだろう」というふうに。私は作品を作っている人や表現をしている人が好きだから、作り手の人たちがやりにくさを感じるのは嫌なんです。私の場合、最初は「歌手になりたいけど顔が綺麗な人しかなれないだろうな」と思っていたから、なりたいものの項目からは外して、絵を描いたりしていたんです。でも結局今も音楽をやっているんだから、最初から項目から外さずに音楽をやっていればよかったなぁって、今もすごく思っていて。自分がハチャメチャにやっている姿を見せれば、「これぐらいならやってもいいんだ」って、他の人にも思ってもらえるかなって。今の音楽業界にはルールが増えすぎて面白くなくなってきているから、壊さなきゃなって冷静に考えている自分もいます。あ、でも普段は「梨の季節が終わったなぁ」とか、「栗ご飯食べたいなぁ」とか、そんなことばっかり考えています(笑)。

NUKEME:僕は大森さんのその客観性の高さに惹かれているんです。歌詞を書くことはとても主観的な世界じゃないですか。大森さんは自分の中にある「グチャっとしたもの」を歌っているのに、そこにふと現実に戻されるような言葉が入ってきますよね。『笑笑でもいいから帰りたくない』とか。「あ、笑笑でいいんだ!」って(笑)。

大森:自分のことを歌っている歌詞が好きじゃないんですよ。「お前のことなんかどうでもいいよ!」って思う。自分の見えている世界じゃないところへ行けたり、景色が変わることが音楽の良いところなので、「俺の青春は〜!」とか「私はこんなにつらいんです、こんなに会いたいんです」って言われても……って思うんですよ。私、つんく♂さんと小室哲哉さんの歌詞が好きで。つんく♂さんと小室さんは女子に書いているじゃないですか、女の子がこう言ったら可愛いだろうとか、この女の子の本質はこうなのかな、って。外側から見ているから、歌詞にすごく入り込むことができるんです。だから私もなるべく歌詞から主観が抜けるように意識していて、自分の本音を一番軽い言葉で言おうとしている部分があります。

ただつんく♂さんや小室さんとは違って、大森さんは自分で詞を書いて、自分で歌っていますよね。だから客観と主観を分けるのはものすごく難しい行為だと思います。

大森:嫌でも主観の部分は入ってしまうから、客観を重視して考えれば出来ます。歌うときは「なにこの曲! すげー良いじゃん!」って思いながら、まるで人の曲のように歌っているので。

NUKEMEさんにも、手間がかかる服の割にアウトプットや表現はさらりとされているという印象があります。熟考されたのちに、ポップにアウトプットしたというか。

NUKEME:僕も作品の中にはなるべく「自分」を入れたくないと思っています。自分が居なくても成立する、自分は何もしていないことが理想で。例えばWordのデフォルトのフォントを使うとか、帽子もありものをそのまま使ったり、エイプのコピー商品をテーマにした作品で機械に勝手にデザインさせている部分には、そういう気持ちが出ていると思います。

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大森靖子

大森靖子

弾き語りを基本スタイルに活動する、新少女世代言葉の魔術師。'14夏はTokyo Idol Fes、フジロック、ロックインジャパンに出演、音楽の中ならどこへだって行ける通行切符を唯一持つ、無双モードのただのハロヲタ。あとブログ。

NUKEME

NUKEME

洋服を一種のメディアでありコミュニケーションツールであると捉え、ファッション・アイテムを支持体とした作品を多く制作する。最近は洋服じゃない作品もある。コラボが異様に多い。
ミシンの作動データにグリッチを発生させる『グリッチ刺繍』が2012年に第16回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出された。
割かとナイスコミュニケート

WEB SITE:
http://nukeme.nu/

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