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~ "Slow Waves" Release Party イベントレポート ~
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2014年8月15日、イギリスの若手プロデューサー・Submerse初のフルアルバムとなる『Slow Waves』のリリースパーティが2.5Dで開催された。『Slow Waves』はkidkanevilやMadeggが所属する〈flau〉(海外は〈Project Mooncircle〉)よりリリースされ、そのタイトルやアルバムジャケットが表象するように、全体を通してアンビエントな空気感漂う美麗ダウンテンポな作風となっており、イベント当日のような蒸し暑い夏の夜をチルアウトさせてくれるのにピッタリな1枚だ。

Edit & Photo:渡邉竜成(2.5D)




少し肌寒い程にクーラーの効いた会場、オープンDJを務めるのはヒップホップ〜R&Bを通過したフューチャービートな選曲が近頃注目を集めている〈Soulection〉所属DJのYukibeb。

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耳障りの良いセクシーなビートミュージックを中心とした選曲によってじんわりと暖まり始める会場。不愉快な汗も引いた頃には既にフロアには多くの人々が集まり、各々が思い思いに体を揺らしていた。聴衆から「sexy!」と歓声があがるほどにフロアを恍惚とさせ、オープンDJとして「さすが」の一言に尽きる余裕さえ感じる展開。約1時間に及ぶYukibebのプレイによって2.5Dは珍しくアダルトな雰囲気に包まれていた。艶やかなプレイ姿と時折みせるキュートな笑顔、今宵に期待を抱かないはずがない。

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続いておもてなしギャグから始まったCRYSTAL。CRYSTALはシンセ、ボコーダー担当の三宅亮太、同じくシンセと、デザイン担当の丸山素直、ベースシンセ、グラフィックデザイン担当の大西景太、映像、VJの佐藤晋哉からなる4人組シンセサイザーバンドだ。今年の6月にTEKI LATEXが主宰するフランスのレーベル〈Sound Pellegrino〉よりリリースされたコンピレーションアルバム『snd.pe vol.03』に新曲『Underwater』が収録されている。


緻密にプログラムされた映像演出と完成しきったライブパフォーマンスが作り上げるその世界観は、いかれたテーマパークのショーのよう。ニューウェーブ・テクノポップのダンサンブルなサウンドに身を任すこともできれば、毒々しさとポップさ、そして人々を楽しませるギャグ要素満載の映像といった心掴まれる魅力を掛け持っている。一転して時折湧出するエモーショナルな旋律による高揚感と緊張感、そして三宅亮太の程よく力の抜けた耳にまとわりつくような歌声のバランスも心地良い。

fitz ambro$eはカナダはケープ・ブレトン島出身、現在は東京を拠点に活動するビートメーカーだ。今年の6月には〈Cascade Records〉と〈Darker Than Wax〉による共同コンピレーション・アルバム『Feelings in Colour』に『Ezout』を提供している。


夜を思わせるメロウで実に色っぽいサウンドは、ネタ感のあるサンプリングから窺えるように80s〜90sのヒップホップ感覚を保ちつつも、ラグと間を意識したヨレたビートにのって自在に変化し、まるで雑踏とする東京の情景を反映しているかのよう。

ライブも佳境に差し掛かり、座り込みながらサンプラーを演奏する姿に思わずこちらも感極まる。

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続いてイギリス出身のMatt LyneことA Taut Lineの姿がステージ上に。レーベル〈Diskotopia〉を主宰し、80年代後半〜90年代のグルーヴ、ハウスや日本のシティポップからインスパイアを受けたGreeen Linez という名義で、ユニットとしても活動している。

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ハウスやテクノを基調に時折ジャズやアフリカンリズムを被せ、その幅広い音楽性はフロアを大いに楽しませていた。ライブ中にパーカッションシンセサイザーを叩くといったスタイルで、ディレイの効いたどこか呪術的なグルーヴはジャンルや場所を超える音楽の旅へと誘うかのようだ。

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怪しい仮面をつけ登場したのはsauce81ことnobuyuki suzukiの別プロジェクトで、今年の5月に『In The Pocket』をリリースしたN’gaho Ta’quia。


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ジャズファンクの土臭さに現代の”エレクトリックな装飾”を可視化したようなサイケデリックなサウンドとファンクネスにうねるベースが生み出すグルーヴにフロアは沸点間際であった。ただでさえ異様なエネルギーが渦巻くN’gaho Ta’quiaだったが、VJ NEGIによる映像演出によってより圧倒的な存在感を放っていた。

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続いて登場したのはメインアクトのSubmerse。
会場を熱気に包んだN’gaho Ta’quiaとは対照的に、fitz ambro$eとも共通する絶妙なラグのあるビートは実に涼しげで、夏の終わりに感じる哀愁すら漂わせる。消え入ってしまいそうに繊細で脆弱な音の一粒一粒が、清涼感のあるノイズとひとつなぎに運ばれ火照った体を優しく冷ます。

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潮の満引きのように淡々と、ただ淡々と、しかしゾクっとするほど耽美的で、言葉を失うほど美しい音像がフロアを包み込む。

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こうしてあっという間の3時間30分が経過しパーティも無事終了した。Submerse本人の指名で集まった7組のアーティストによるパフォーマンスは、どれも他に埋もれない強烈な個性でフロアを楽しませていた。特にVJ NEGIによる映像演出は観客さえも映画のワンシーンとしてカットしてしまうようなストーリー性を感じるもので、アーティストの魅力を最大限引き出す役割を果たしていた。

都会のオアシスとでも言うかのようなひと時に、何をするでもなくだらだらとフロアに残る人々。かく言う僕も、終電の時刻が迫るのを気にしつつ、壮大な映画を見た後のような余韻にどっぷりと浸っていた。


Slow Waves

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イギリス出身のsubmerseは超個人的な影響を独自のセンスで消化し、ビートミュージック、ヒップホップ、エレクトロニカを縦横無尽に横断するユニークなスタイルを持つDJ/ビートメーカーとして知られている。これまでにベルリンの老舗レーベルProject: Mooncircleなどから作品をリリースし、SonarSound Tokyo2013、Boiler Room、Low End Theoryなどに出演。また、英Tru Thoughtsや仏Cascade Recordsなどのヒップホップレーベルのリミックスワークも手がける。2014年には待望のデビューアルバム’Slow Waves’がProject: Mooncircleとflauよりリリースされる。 また、Pitchfork, FACT Magazine, XLR8R、BBCといった影響力のあるメディアから高い評価を受ける。

submerse ‘SLow Waves’ Release Party

submerse ‘SLow Waves’ Release Party

放送日:2014年8月15日
出演:submerse,N’gaho Ta’quia aka sauce81,A Taut Line,fitz ambro$e,Yukibeb,CRYSTAL,VJ NEGI
内容:LIVE / DJ
時間:OPEN/START 19:30
場所:2.5D(渋谷PARCO part1 6F)
観覧料:¥1,500(1Drink別)