特集

『ワンダフル』ミュージックビデオ同時公開記念トークセッション
環ROY × 古屋蔵人 × 大月壮 × 森翔太 座談会

2013年4月3日にリリースされたラッパー・環ROYの四作目のアルバム『ラッキー』。本記事と同時公開されるアルバム収録曲『ワンダフル』のMVは、今回がインターネット上で初公開となり、約四十名の映像作家のクリエイティブが集結した意欲作。
そして今回、環ROYさんはもちろん、本作ディレクターの古屋蔵人、MVに参加した大月壮森翔太を迎え、『ワンダフル』のMVを端緒に話を伺った。


Text:石井龍(2.5D)/ Photo:谷浦龍一(2.5D)

まずはじめに『ワンダフル』のMVについて教えて下さい。

古屋蔵人(以下:古屋):まずCDジャケットのデザインのオファーをもらったのですが、ROY君が「あまり気張ったことはやりたくない」と言っていて、『BREAK BOY』や『あっちとこっち』では、ROY君が真正面を向いている姿の写真を使っていたのですが、僕の中では常に斜に構えていたり、ちょっとふてくされているようなイメージがROY君っぽいと思って、今回は後ろ姿のジャケにしようと提案しました。

環ROY(以下:環):いきなり……。これからはふてくされないで生きていきたいよ(笑)。

古屋:僕はやたら後ろ向きを推していたのですが、最初の頃ROY君自身は「後ろ向きはちょっと」くらいの感じだったよね。

:ですね。ちなみに気持ちじゃなくて物理的な向きですからね(笑)。

古屋:『ラッキー』のメインジャケットはROY君を少し後ろから撮っている写真ですが、アルバムの中身を見ると色々な角度から撮っていて。MVの方もジャケットも彼が立っている位置とカメラとの距離を二十四分割したチャートみたいなものを作って、カメラとROY君の距離を一定にするというルールで撮影しました。

:最初の打ち合わせの段階で作品のテーマを説明したんですよ。その時「回転」という言葉が浮かんだんだった。

古屋:気づきにくいとは思うのですが、MVは正面を向いている時が早朝で、左右は夕方。後ろを向いている時は夜という感じで時間軸になっていて。ある程度画面の明るさが歌詞の心象を反映するように編集してます。『YES』のMVを撮影しているちょうどその時に「やっぱりMVもうひとつ作りたいんだけど」とROY君が言い出したのが『ワンダフル』を作り始めるきっかけで(笑)。

大月壮(以下:大月):撮影の最中に言い出したんだ(笑)。

古屋:そう(笑)。若手に譲るのも考えたけど、制作費も時間もない中でパスするのは悪いじゃないですか。その時にソニックジャムの石澤秀次郎君が会社のスタジオを貸してくれると言ってきたので、グリーンバックで撮影した素材を細かくして、作家に配ってしまうという方法を思いついたんです。みんな5秒だったら好意でやってくれると思って。

:ドネーション方式ですね。大月さんは話が来た時どう思った?

大月:「超裏技きたぞ!」みたいな感じかな(笑)。『映像作家100人』を編集している古屋君の人脈ありきで出来る技だとは思うけど、これは一度きりの技だよね。だから二回目は絶対にないから「やっとくか!」ってなったかな。

古屋:もちろん作家のみなさんには本当に申し訳ないなと思ったけど、時間とリソースがない中の唯一の裏技で。

:無茶ぶりでごめんなさい。ここで参加してくれてる皆さんに言いたいです。どうもありがとうございました。

初めて映像を観た時は話題性ありきで仕掛けたのかと思いました。

古屋:もちろん話題性は考えましたけど、それ以前にこの方法しかなかったんですよ。『YES』は撮影だけで三日くらいかかっていて、レンタカーを借りて色々なロケ地を点々としながらひとつひとつのアングルを撮っていくようなスタイルでしたけど、『ワンダフル』は本当に時間もお金もなくて、怒られる覚悟で、友達全員に連絡することから始まりました。

:今回は基本的に全て裏技を使っていて、撮影スタジオから編集者まで5万円でどうにかしてもらったもんね(笑)。

大月:俺も先々月に作ったKLOOZの”360度MV”(※コチラ)は裏技使った(笑)。

:撮影場所はどうしたの?

大月:菅原そうたの実家で撮影したんだよね。撮影機材もタイアップしてもらった。『ワンダフル』にしてもコストをかけずに完成させて、何より映像的なフックもあるからナイス裏技だね。

古屋:『YES』のビデオはキレイに仕上がると確信してたけど、『ワンダフル』の方は滅茶苦茶になるだろうと予想はしていて。ROY君に「どういうものがあがってきてもウェルカムな姿勢でいてね」という話はしていたけど、案の定森さんの映像は「ちょっと(笑)」ってなったよね(笑)。

一同:(笑)。

大月:他に問題になった作品はあった?

古屋:問題になった作品はないけど、作品のクオリティが僕と作家のコミュニケーションの度合いに比例していると思う(笑)。あとは僕ではなく石澤くんがオファーした作家さんも十組ほどいて、彼らとのコミュニケーションがなかったから、仕上がりが予想できない部分もあった。

大月:そういう距離感があのビデオを観ると分かるんだ(笑)。ちなみにどうして今回の対談はこの4人になったの?

古屋:まず、そもそも僕にROY君を紹介してくれたのが大月さん。森さんはROY君が仕上がってきた映像を一番拒否した代表として参加して頂きました(笑)。

:拒否してないよ(笑)。森さんは相当変なものになると最初から分かっていたから、映像を観て「森さんらしいな」と思ったけど、レーベルの人は「本当に良いの?」ってずっと聞いてきて。すごい心配されたよ(笑)。

古屋:そうなんだ(笑)。

森翔太(以下:森):映像自体は5秒ですが、楽しくなってしまい5時間分くらいかけて素材を撮りました(笑)。てっきり、僕くらいが基準だろうと勝手に思い込んでいたので。あ、基準というのは、皆も同じくらいの時間をかけて、変装したり、アクションしたりするのかな、と。他の方々の映像を観せてもらった時、自分と他との差に、膝から崩れ落ちました。

:崩れ落ちたの?(笑)。けど、そんなに集中してくれたなんてありがたいです。普段から映像を制作しているんですか?

:僕は映像作家というよりは、実写を撮って編集する人くらいな……。

古屋:Adobe Premiereしか使えないもんね。

大月: “仕込みiPhone”のシリーズも編集がめちゃくちゃ上手かったですよ。

:ありがとうございます(笑)。どうしても環さんと共演したいという気持ちがありまして、同じ画面になんとか収まりたくて無理矢理合成させてもらいました……。当初は風車を全身に纏い扇風機で回す儀式のような映像にしようと思っていたんですね。でも流石にイロモノになりすぎてしまうと思い却下しました。

大月:それめちゃくちゃカッコイイじゃないですか!(笑)

:自分だけが浮くのは良くないと思いまして。

古屋:浮いてますよ。

一同:(笑)。

:森さんのパートは「あいうえお作文コスプレ」ですよね?

:そうなんですよ! 当初「き」はKiroroという具合で全てアーティスト名で統一しようと思い、Kiroroの顔ハメを作ったりしたのですが、流石にKiroroは問題になると思いボツにして、これなら大丈夫かな……という感じでまとめました。

古屋:でもロッド・スチュワート出してたらkiroroも変わらないと思うよ(笑)。絶対にキレイな映像にはならないと思っていたけど、参加した人がそれぞれの持ち味で5秒を担うから、ショーケースとしては面白いと思うし、参加した人たちの中には参加することで得する人もいるかもしれない……。もちろん損する人もいると思うけど(笑)。僕が編集している『映像作家100人』に付いているDVDと同じで、短いショーリールに近いかな。


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環ROY

環ROY

トラックメイカーでありラッパー。「FUJI ROCK FESTIVAL」や鎮座DOPENESSとのユニット・KAKATOとしてタイ最大規模の音楽フェスティバル「Big Mountain Music Festival」などに出演。

OFFICIAL SITE:http://www.tamakiroy.com

古屋蔵人

古屋蔵人

編集者、デザイナー。編著書に『映像作家 100人』『BTTV』など多数。ライターとしても活動しており、STUDIO VOICEやゲーム誌、カルチャー誌などに 寄稿。

OFFICIAL SITE:http://kurandofuruya.com

大月壮

大月壮

独創的でぶっ飛んだ作風からマジメなクライアントワークまで柔軟にこなす映像クリエイター、ディレクター。近年はWEBやテクノロジーを独自の価値観で映像に取り入れたディレクションを多く行っている。

OFFICIAL SITE:http://0m2.jp

森翔太

森翔太

映像監督、俳優、ディレクションをこなす。全編自画撮りのドキュメント的映像や、自作ガジェットをフューチャーした映像、ディレクションもつとめたドラマ的な演出映像など、様々な作品を制作。

OFFICIAL SITE:http://morisatoh.jimdo.com